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第二十七回ブログ 「わかされ」

  • 執筆者の写真: Eito Kusakabe
    Eito Kusakabe
  • 2023年10月30日
  • 読了時間: 4分

第二十七回ブログ 「わかされ」


「わかされ」と聞いて言葉の意味がすぐ分かる人は、若しかしたら長野県、群馬県にゆかりのある人かもしれません。元々は、この地方の方言で、道が左右に分かれるところ。分かれ道。追分。つまり分岐点を表す言葉ですが、美智子皇太后が皇后時代に歌会始で詠まれた歌

「かの時に我がとらざりし分去の 片の道はいづこ行きけむ」

で、多くの人が知ることとなった言葉です。

人は生きている中で大小を問わず分かれ道に立ち、どちらに行くかを選択しているものです。「あの時」もう一つの方の道を取っていたら自分はどうなっていたのだろうと別れ道のことを考えることは誰しもあることだと思います。


終活期に入り、自分の人生を振り返ることが多くなると、今まで本当に多くの「わかされ」を経てきたものだと思い知らされます。今更後悔することはないけれども、暇に任せて自分の取らなかった生き方を想像してみることは興味深いことです。

私もいろいろなおおきな「わかされ」に出会ってきました。

・田舎の地元の大学に行くか?東京の大学に行くか?

・大変な思いをして入った会社を、研修期間の終わったばかりの4ヶ月で辞めるか?

・誰と結婚するか?

・子供を産むか?

・大学に入り直し、心理学を勉強するか?

・大学院に行くか?

・夫についてアメリカに行くか?

・夫が帰国を選ばずアメリカに残り会社を辞めることに賛成するか?

・カウンセラーとしてアメリカで本気で働くか?

・23年過ごしたアメリカを去り、日本に帰るか?

その他にも幾つもの「わかされ」があり、選択を迫られました。悩み、苦しみ、選択しました。それがよかったのか悪かったのか全く分かりませんが、後悔もありません。

ただ「わかされ」に直面し自分が選び取った道を振り返ると、自分という人間が何を望み、何を大切にしてきたかが見えてきます。

基本的に私はわがままな自分中心の人間だなと分かりました。

親は地元の大学を望んでいただろうに、私は東京に行きたかった。そして、行った。それを皮切りに、私はいつも自分がどうしたいかという気持ちに添って道を選択してきました。周りを考えなかったわけではありません。そのために悩み、苦しみました。それでも、最終的にはいつも自分が本当に願っていることは何か?で選びました。どうしたら、自分の思いを叶えることができるか?自分の思いを叶えるために、何を犠牲にし、何を捨てるのか?一生懸命考えました。確かにわがままです。自己中心的です。

この性格は子供の時からあったように思います。周りの大人が私のことをどう見ていたか、どう言われてきたかを思い出すと納得がいきます。

・諦めの悪い子やなあ。しつこいなあ。

・得手勝手な子やなあ

・好きなことだけしかせえへんなあ

全部ネガティヴな評価です。そうか。確かに「三つ子の魂百まで」と言われるように私は子供の頃から変わっていないのか。自分では変わった、成長したと思っていたのに本質は変わっていなかったのか。そう思うと、我ながら可笑しくなります。

同時に、私がそんなにもしぶとく、諦めず求めてきたもの、大切なものとは何だったのだろうと考えました。私が一生かかって願っていたのは何だったのだろうと考えました。私が得た答えは「自由であること」「人に束縛されないこと」でした。自立と自律が私にとっての願いだったのです。それを得るために、しつこく、諦めず、それなりの努力もしてきたのだと納得がいきました。

人生のカーテンコールが近くなって、自分の人生を納得して受け入れることが出来るのは正直幸せだと思っています。周りに掛けてきたたくさんの迷惑を心から詫び、私のわがままを許し、受け入れてくれた周りに心から感謝しています。


そんな私が、これからまだまだ幾つもの「わかされ」に出会う若い人たちに心から伝えたいことは、自分の気持ちに添った道を選んで欲しいということです。どちらの道を選ぼうとそれが正しいかどうかは分かりません。必ずしも幸せに続いている道とも言えません。ただそこで選択に悩み、考えたことは必ず力になります。「わかされ」にたくさん出会い、たくさん悩み、たくさん考えることで強くなれます。自分の人生という物語の主人公になることが出来ます。後悔することがありません。少なくともその時の自分が全身全霊を掛け選び取ったのですから。

良いことも悪いことも全て受け入れ納得して人生を終えることが出来るのは、終活に当たってのおおきな安らぎです。

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